7月6日のJapan.co.jpはファッション特集である。だから、今日のJapan Market Deskは、上場ファッション企業を読む特別版にする。東京市場には、実は世界的なファッション企業が並んでいる。UNIQLOのFast Retailing、Onitsuka Tigerを擁するASICS、MUJIのRyohin Keikaku、ZOZOTOWNのZOZO、ABC-Mart、Shimamura、and ST HD、Onward、United Arrows、World、TSI Holdings。服は文化であり、同時に株式市場のセクターでもある。
日本のファッション株を読むとき、単純な「アパレル小売」では足りない。Fast Retailingは世界的アパレル製造小売であり、指数インパクトの大きい大型株である。ASICSはランニングとスニーカー・ファッションの両方を持ち、Onitsuka Tigerを高マージンのグローバル・ライフスタイル事業へ育てている。Ryohin Keikakuは衣料だけではなく、生活雑貨、食品、住まい、海外店舗を持つライフスタイル株である。ZOZOは服を売る会社であると同時に、データ、EC、サイズ、広告、プラットフォームを売る会社である。
つまり、東京のファッション株は、デザインの話だけではなく、円安、インバウンド、賃上げ、消費、EC、越境展開、低価格、素材、物流、在庫回転、ブランド資産、AI採寸、観光客の買い物、そして世界のスニーカー・ブームを同時に読む場所である。
ファッション株は、三つの市場に分かれる
日本の上場ファッション企業は、だいたい三つの市場に分けて読むと見えやすい。第一に、世界市場で勝負するブランド企業である。Fast Retailing、ASICS、Ryohin Keikakuがここに入る。第二に、国内消費と価格帯で勝負する小売企業である。Shimamura、ABC-Mart、and ST HD、Onward、United Arrows、World、TSIなどがここに入る。第三に、服の販売インフラを握るプラットフォーム企業である。ZOZOが代表例である。
この三つは、同じ「ファッション」でも、株価のドライバーが違う。グローバル企業は、海外成長、ブランド力、円安、店舗展開、サプライチェーンが効く。国内小売は、賃上げ、家計の実質所得、値上げ耐性、在庫、天候、セール時期が効く。プラットフォームは、取扱高、広告、データ、AI、会員基盤、物流効率が効く。
Fast Retailing:UNIQLOは日本の消費株ではなく、世界株である
Fast Retailingは、日本のファッション株の中心である。Reutersは4月、UNIQLOを展開するFast Retailingが2026年2月期四半期で営業利益を前年同期比29.4%増の1,898億円とし、通期営業利益見通しを7,000億円へ引き上げ、5年連続の過去最高益を見込むと報じた。North AmericaとEuropeの成長が特に強く、同社はもはや国内衣料小売ではなく、世界的アパレル企業として評価されている。
Fast Retailing自身のIR資料でも、UNIQLO Internationalの2026年上期売上収益は1兆2,413億円、事業利益は2,330億円と大幅増収増益だった。ファッション特集の日に、東京市場で最も大きなファッション銘柄がどれかと聞かれれば、答えは迷わず9983である。
ただし、Fast Retailingは大きすぎるがゆえに、単純な成長株ではない。中国の消費、米欧の店舗拡大、原材料、為替、物流、人件費、柳井正氏の後継問題、LifeWearの飽きられにくさ。すべてが株価の材料になる。
ASICS / Onitsuka Tiger:スポーツ用品からファッション・スニーカーへ
ASICSは、いま最もファッション的に面白い上場企業の一つである。Reutersは6月、ASICSが高級スニーカーブランドOnitsuka TigerをOT Groupへ移管し、より迅速な意思決定とグローバル展開を進めると報じた。Onitsuka Tigerは、2025年に売上が43%増の1,365億円、営業利益率は38%に達したとされ、2026年1〜3月期も売上が約3分の1増加し、営業利益率は約40%と報じられた。
これはスポーツ用品会社の中に、ラグジュアリーに近い経済性を持つファッションブランドが生まれているという話である。Mexico 66、薄いロープロファイルのスニーカー、訪日客、レトロ・スニーカー・ブーム、NikeやAdidasの大型ブランド疲れ。Onitsuka Tigerは、日本文化への関心とスニーカー市場の変化を同時に受けている。
市場が見ているのは、単なるランニングシューズの売上ではない。Onitsuka Tigerを独立的に運営することで、ASICS本体のスポーツ機能性と、Onitsuka Tigerのファッション性をどう分けて育てるかである。成功すれば、ASICSはスポーツ株であり、ファッション株でもある。
Ryohin Keikaku:MUJIは服だけではなく、生活の指数である
Ryohin Keikakuは、衣料だけでなく、生活雑貨、家具、食品、店舗空間を持つライフスタイル企業である。Reutersの会社概要は、同社がMUJI / Mujirushi Ryohinブランドで国内、東アジア、欧米、東南アジア・オセアニアに事業を持つと説明している。Investing.comは4月、MUJIの運営会社が2026年純利益見通しを従来の508億円から620億円へ引き上げ、売上見通しも8,870億円としたと報じた。
ファッション特集でRyohin Keikakuを入れる理由は、MUJIの衣料がデザインを大声で語らないからこそである。白、生成り、グレー、黒、麻、綿、機能素材、収納、生活。MUJIの服は、流行というより生活規格である。投資家にとっては、消費者が“余計な装飾”より“使えるよいもの”へ戻る局面で強い。
ZOZO:服のプラットフォームは、データ株でもある
ZOZOは、上場ファッション銘柄の中で最もプラットフォーム色が強い。ZOZOTOWNは、日本のアパレルECの中心的存在であり、WEAR、サイズデータ、広告、決済、物流、ブランドのオンライン販売基盤と結びつく。ZOZO公式IRは、国内ファッションEC市場規模を約2.7兆円と推定し、同社のGMVベースのシェアにはなお成長余地があると説明している。
服の小売は、在庫を抱えるほど難しくなる。しかし、プラットフォーム企業は、在庫リスクを相対的に抑えつつ、取扱高、広告、データ、会員、返品率、サイズ精度で価値を作る。ZOZOの投資論点は、単に服が売れるかではなく、どれだけ効率よく売れるかである。
Shimamura、ABC-Mart:価格と実用の強さ
ShimamuraとABC-Martは、国内消費を見るうえで重要である。Shimamuraは低価格衣料の守備株であり、家計が物価高に疲れている時ほど、値頃感と店舗網が力になる。ABC-Martは、靴という生活必需とファッションの中間にいる。Reutersの企業概要は、ABC-Martが靴の販売と自社商品の企画開発を主に行う会社であり、国内外セグメントを持つと説明している。
この二社は、Fast RetailingやASICSほどグローバルな夢を語らないかもしれない。しかし、日本の家計が何を買えるか、何を我慢するか、どの価格帯なら動くかを知るには欠かせない。賃上げ5%台が本当に消費へつながるかを見るなら、こうした日常衣料・靴の銘柄は重要な温度計になる。
and ST、Onward、World、TSI、United Arrows:中堅アパレルの勝負
and ST HD(旧Adastria)、Onward Holdings、World、TSI Holdings、United Arrowsは、日本の中堅アパレル投資の中心である。大きな夢ではFast Retailingに負けるが、ブランド運営、店舗改革、EC、卸、在庫、セール、百貨店、都心消費、若い顧客、インバウンドの一部を細かく映す。
中堅アパレルを見るポイントは、ブランドの数ではない。どのブランドを残し、どの店舗を閉じ、どこへECを伸ばし、どこで粗利を守るかである。百貨店依存が重い企業、郊外型が強い企業、EC比率が伸びる企業、若い顧客をつかむ企業で、評価は大きく分かれる。
上場ファッション株ウォッチリスト
| 銘柄 | コード | 分類 | 投資テーマ |
|---|---|---|---|
| Fast Retailing | 9983 | グローバル衣料 | UNIQLO世界展開、LifeWear、米欧成長、指数寄与 |
| ASICS | 7936 | スポーツ / スニーカー | Onitsuka Tiger分社化、レトロスニーカー、スポーツ×ファッション |
| Ryohin Keikaku | 7453 | ライフスタイル | MUJI、生活消費、海外店舗、衣料と雑貨 |
| ZOZO | 3092 | ECプラットフォーム | ZOZOTOWN、EC、データ、広告、サイズ技術 |
| ABC-Mart | 2670 | 靴小売 | 靴、スニーカー、国内店舗、訪日客 |
| Shimamura | 8227 | 低価格衣料 | 家計防衛、郊外店舗、値頃感 |
| and ST HD | 2685 | カジュアル / ライフスタイル | GLOBAL WORK、LOWRYS FARM、niko and、ブランド横断EC |
| Onward Holdings | 8016 | 総合アパレル | 百貨店・EC・ブランド再編、国内アパレル回復 |
投資家が見るべき五つの針
Market Movers Timeline
Japan Market Desk View
日本のファッション株は、いま二極化している。Fast Retailing、ASICS、Ryohin Keikakuのように海外成長とブランド資産を持つ企業は、円安と世界展開の物語を持っている。一方、Shimamura、ABC-Mart、and ST、Onward、World、TSI、United Arrowsのような国内色の強い企業は、家計、店舗効率、在庫、ECの勝負になる。
投資家にとって、2026年のファッション株は「おしゃれかどうか」ではなく、「どの市場に売っているか」「円安を味方にできるか」「在庫を回せるか」「ブランド資産が海外でも効くか」「AIやデータで返品と提案を改善できるか」で決まる。
結論はこうだ。東京市場のファッション株は、文化銘柄であると同時に、為替銘柄、消費銘柄、観光銘柄、EC銘柄である。明日のファッション特集を読むなら、ランウェイだけではなく、上場企業の株価ボードも見ておきたい。
Sources and references
このMarket Desk特別版は、Reuters、Fast Retailing IR、ZOZO IR、Google Finance、MarketWatch、Investing.comなどの公開データと企業概要を参考にしました。株価は遅延表示や参照時点の違いを含むため、投資判断には各証券会社・取引所の最新データを確認してください。
- Reuters: Fast Retailing Q2 profit and raised full-year outlook.
- Fast Retailing IR: FY2026 first-half results summary.
- Reuters: ASICS / Onitsuka Tiger global expansion and margin context.
- Reuters: ASICS to move Onitsuka Tiger into OT Group.
- Investing.com: Ryohin Keikaku / MUJI forecast upgrade.
- ZOZO IR: Fashion e-commerce market environment and ZOZO share context.
- Reuters: ABC-Mart company profile and market data.
