企業は長いあいだ、検索結果の一ページ目を目指してきた。青いリンクの上位に出ること。広告枠を買うこと。口コミを集めること。比較サイトに載ること。ブランドの発見は、だいたいそのあたりで起きた。だが2026年、入口そのものが変わり始めている。ユーザーは検索窓に単語を入れるだけでなく、ChatGPT、Gemini、Google AI Mode、Copilotに質問する。するとAIは、リンクの束ではなく、ひとつの答えを返す。企業名を挙げることもあれば、挙げないこともある。強みを正しく説明することもあれば、古い情報や第三者の評価に引きずられることもある。ここで問われるのは、「検索で見つかるか」ではない。「AIにどう説明されるか」である。

この新しい地平に、横浜のsecondz digitalが早くから名前を付けている。AEO、AI検索最適化、Answer Engine Optimization。2026年3月、同社はマーケティング専門メディアMarkeZineで、AI検索環境において企業やサービスがどのように説明されるかを最適化する考え方を紹介した。従来のSEOの延長線だけでは語れない、AI回答時代のブランド可視性である。

AEOとは何か:検索順位ではなく「説明のされ方」を争う

AEOという言葉はまだ揺れている。Answer Engine Optimizationと呼ぶ人もいれば、AI Engine Optimization、Generative Engine Optimization、LLMOと呼ぶ人もいる。Google自身は、AEOやGEOといった用語を認めつつも、Google Searchの立場では生成AI検索への最適化も本質的にはSEOの延長だと説明している。つまり、基礎は変わらない。良い情報、明確な構造、クロール可能性、信頼性、独自性。だが、表面に出る体験は大きく変わる。

従来のSEOでは、読者がクリックしてページを開くことが前提だった。AEOでは、その前にAIがページ、公式情報、第三者レビュー、ニュース、FAQ、動画、比較記事を読み、要約し、ユーザーに返す。企業は一位表示を狙うだけでは足りない。AIが答えを作るときに、自社を正しい文脈で、正しい比較軸で、正しい新鮮さで扱うように、情報の土台を整えなければならない。

AEOの本質は、AIをだますことではない。自社についての公開情報を、機械にも人間にも誠実に読める状態へ戻すことである。

secondz Agentsense:AIにどう見られているかを測る道具

secondz digitalがこの領域で打ち出す中心的な名前が、secondz Agentsenseである。同社の発表では、ChatGPT、Google AI mode、Copilotなどの生成AI検索で、自社ブランドやサービスがどのように言及・評価されているかを可視化し、AIからの被引用率やプレゼンスを最適化するためのAIエージェントとして説明されている。2025年には、AI検索時代のブランド可視性を分析・改善するプラットフォームとして独自開発したという。

この発想が面白いのは、マーケティングを「広告を打つ仕事」から「情報環境を管理する仕事」へ押し広げる点にある。広告は買える。SEOも一部は設計できる。だがAI回答は、企業サイトだけでなく、ニュース、レビュー、SNS、採用情報、IR、比較記事、過去の炎上、古い価格表、業界資料を混ぜて作られる。AEOは、企業の外側に散らばった情報の反射を読み取る仕事になる。

7月23日のウェビナー:ブランド戦略がAI時代の経営課題になる

2026年7月2日、secondz digitalは「大手企業が実践すべき “AI時代のブランド戦略”」をテーマにした7月23日のオンラインウェビナーを発表した。登壇企業には電通コンサルティング、ファン・マーケティング、クロス・マーケティング、グロースX、キーワードマーケティング、クラウドサーカス、エルテス、ビルコムが並ぶ。プログラムには、検索AIに指名されるためのAEO戦略、企業価値向上のためのブランド戦略、インナーブランディング、AI時代のインサイト発掘、AI人材育成、誤情報・炎上リスク、統合型PRなどが含まれる。

ここで重要なのは、AEOが単なる検索マーケティングの小技として扱われていないことだ。ブランド、PR、人材育成、営業、レピュテーション、ガバナンスが同じ場に置かれている。AIが企業を説明する時代には、会社の断片が全部つながって見える。採用ページの約束、顧客レビュー、代表者インタビュー、導入事例、プレスリリース、製品FAQ、事故対応、炎上対応。AIはそれらを横断して、ひとつの印象を作る。

SEOの歴史から見る:リンクの時代、コンテンツの時代、回答の時代

1990年代後半から2000年代初頭、検索エンジン最適化はページタイトル、メタタグ、リンク、ディレクトリ登録、キーワード密度の時代だった。GoogleがPageRankでウェブのリンク構造を評価し始めると、被リンクの質と量が競争になった。やがてスパム対策が進み、コンテンツの質、専門性、モバイル対応、ページ体験、構造化データが重要になった。

2010年代には、検索結果の上部に強調スニペット、ナレッジパネル、地図、商品カード、動画、ニュース枠が並ぶようになった。ユーザーがクリックしなくても答えを得る「ゼロクリック検索」が広がった。企業は自社サイトだけでなく、Google Business Profile、Wikipedia、レビューサイト、動画、SNS、FAQ、構造化データを整える必要に迫られた。

そして2020年代半ば、生成AI検索が加わった。AI Overview、AI Mode、ChatGPT、Perplexity、Gemini。ユーザーは「おすすめを教えて」「比較して」「この会社は信用できるか」「日本で導入するならどこがよいか」と聞く。検索は、ページを探す行為から、判断を委ねる行為へ近づいている。

Googleの立場:近道はない、しかし構造は必要だ

Google Search Centralの生成AI検索ガイドは、AEOやGEOという言葉を見ても、Google Searchの観点では基本的なSEOが引き続き重要だと説明する。AI OverviewsやAI Modeは検索インデックスから情報を取得し、RAGやクエリファンアウトのような仕組みを使って関連ページを集める。Googleは、独自性があり、信頼でき、人々に役立つコンテンツ、明確な技術構造、クロール可能性、良いページ体験を重視する。

同時にGoogleは、AI検索のためだけに不自然なページを量産すること、特殊なマークアップに過剰期待すること、機械向けだけに文章を書き換えることには慎重であるべきだと示している。これは、AEO業界全体への警告でもある。AI時代のブランド戦略は、裏技では長続きしない。自社の実態、証拠、経験、一次情報をきちんとウェブに出すことが、結果としてAIにも読まれる。

AI回答は編集者になる

AI Overviewに関する2026年の研究は、この変化が単なる表示形式の変更ではないことを示している。ある大規模測定研究は、Google AI Overviewsが多くのユーザーに届く一方、引用されたページの一部では回答内の主張が引用ページで十分に支えられていないケースもあると報告した。別の研究は、生成検索と従来のGoogle検索では取得される情報源が大きく異なり、同じクエリでもAI回答の出方が安定しない場合があることを示した。

企業にとってこれは怖い話である。AIは単に情報を並べるだけではない。選び、要約し、言い換え、比較し、場合によっては省略する。つまりAIは、巨大な編集者になる。しかも、その編集判断は完全には見えない。ブランド担当者は、自社がどのような文脈で引用され、どの競合と並べられ、どの表現で説明され、どの古い情報に引きずられているかを継続的に見る必要がある。

日本企業にとっての意味:公式サイトだけでは足りない

日本企業は長く、公式発表の正確さを重視してきた。会社案内、製品ページ、IR、プレスリリース。だがAI回答時代には、公式サイトだけではブランド像を支配できない。第三者メディア、採用口コミ、導入事例、比較サイト、業界団体、展示会資料、顧客のブログ、YouTube、SNS、Wikipedia的な情報空間が、すべてAIの材料になる。

そのためAEOは、広報、マーケティング、営業、法務、人事、カスタマーサクセスの共同作業になる。営業資料と公式サイトが違うことを言っていないか。古いサービス名が残っていないか。FAQは本当に顧客の質問に答えているか。導入事例は業界別に読めるか。経営者の言葉は抽象論だけでなく、検証可能な具体性を持っているか。AI時代のブランド管理は、社内の情報整理から始まる。

secondz digitalの立ち位置:AI導入支援からブランド可視性へ

secondz digitalは2019年11月設立の横浜の企業で、生成AI・LLMを活用したソリューション開発やコンサルティングを展開している。代表の板井龍也氏は、グリー、エン・ジャパン、PKSHA Technologyでの経験を経て同社を創業したと紹介されている。同社はAI戦略設計、データ基盤構築、AIプロダクト開発、導入・定着までを一気通貫で支援するとしている。

つまり同社のAEOは、単なるSEO会社の新メニューというより、AI変革支援の一部として出てきている。企業がAIを使うだけでなく、AIからどう見られるかを管理する。これは表裏の関係だ。社内でAIを使いこなす組織は、外部のAIに向けても情報を構造化しやすい。逆に社内情報が分断されている会社は、AI回答の中でも分断された印象を与えやすい。

リスク:AEOが新しいスパムになる可能性

ただし、AEOには危うさもある。検索の歴史を振り返ると、新しい表示面が生まれるたびに、そこを操作しようとする小手先の手法が現れた。キーワード詰め込み、リンクファーム、薄いコンテンツ、レビュー操作、低品質な比較ページ。AI回答も同じ誘惑を生む。AIに拾われるためだけの言い換え、実体のない第三者記事、過剰な自己推薦、生成AIで量産した薄いFAQ。

その方向へ進めば、AEOはすぐに信用を失う。むしろ企業がやるべきことは逆である。自社の価値を証明できる一次情報を出す。顧客事例を具体的にする。失敗や制約も説明する。製品データを更新する。経営メッセージと現場の提供価値を一致させる。AIは完全ではないが、公開情報の質が低ければ、質の低い答えが返る可能性は高まる。

Japan.co.jpの見方

AI時代のブランド戦略は、日本企業にとって大きな転換点である。これまでブランドは、広告、店舗、営業担当、展示会、新聞記事、検索結果で作られてきた。これからは、AI回答の中でも作られる。ユーザーがクリックする前に、企業の第一印象が決まる。

secondz digitalのAEOへの取り組みが興味深いのは、AIを効率化ツールではなく、新しい情報環境として捉えている点だ。AIは企業の事務作業を助けるだけではない。企業の評判を要約し、競合と比較し、顧客に候補を提示する。そこでは、ブランドとはロゴや広告コピーではなく、ウェブ全体に散らばった証拠の集合になる。

AEOが本当に成熟するなら、それはAIをだます技術ではなく、企業が自分自身を正確に説明する技術になる。人にも、検索エンジンにも、AIにも、同じように誠実に読める会社。そのような会社が、次の発見の時代に選ばれる。

数字で読む

2026年7月23日secondz digitalがAI時代のブランド戦略ウェビナーを開催予定
2026年3月MarkeZineでAEO・AI検索改善の考え方を紹介
2025年secondz Agentsenseを独自開発したと発表
2019年11月secondz digital設立
ChatGPT / Gemini / Copilot企業説明の入口になりつつある代表的AI環境
AEO / GEO / LLMOAI回答時代の可視性をめぐる新しい用語群

読者のための要点

項目内容
何が起きたかsecondz digitalが、AIに企業・サービスがどう説明されるかを可視化し改善するAEO領域を前面に出している。
なぜ重要か検索結果の順位だけでなく、AI回答の中で引用・説明・比較されるかがブランド発見の入口になりつつある。
中心ツールsecondz Agentsense。ChatGPT、Gemini、Google AI Mode、Copilotなどでの言及・評価を分析するAEO支援プラットフォーム。
歴史的文脈SEO、コンテンツマーケティング、ゼロクリック検索、生成AI検索の流れが重なり、ブランド戦略と検索戦略が一体化している。
最大のリスクAI向けの小手先の最適化に走り、人間にとっての信頼、経験、実体を失うこと。

Sources and references

この記事は、secondz digitalの公式発表、Google Search Centralの生成AI検索ガイド、AI Overviewに関する研究・報道などを参照しました。